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2022.02.07 出自を知る権利

日本生殖医学会2021にはいろいろな演題や発表がありました。

どの内容も大変勉強になるのですが、その中で私が気になったテーマに「配偶子提供の課題」がありました。

配偶子とは、生殖医療においては、精子と卵子のこと。

妊娠を希望しているけれど望むようにならないカップルや個人が、別の人の精子または卵子を使って妊娠することが医療の技術によって可能になりました。

この技術によって、待ち望んでいた赤ちゃんを産むことができた方々がおられ、これはとても素晴らしい技術です。

その一方で、それに伴う問題点がないわけではありません。国の法律も、徐々に整えられる方向ですが、まだまだこれから良くしていく余地があるようです。

学会では、ご自身の実体験をもとにお話しをされた先生がおられました。そのお話をかいつまんでご紹介します。

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23才の時に、父親の遺伝病がわかり、そのことがきっかけで、母親から自分は第三者からの精子提供により生まれたことを知らされる。

父の遺伝病を受け継いでいないことはわかったものの、今までそのことをずっと隠されていたことを知る。

もしもその件がなければ、その後も事実を聞かされることはなかったかもしれない。

そして母は「そのことを他人に言ってはいけない」と、精子提供をとてもネガティブに捉えている。

では、そんなに母がうしろめたくネガティブに捉えた生まれ方をした自分って、いったい何なんだろう?

今まで23年間それを隠してダマし続てきた親って、いったい何なんだろう?

仲の良かった母親に対する信頼感もゆらぎ、自身の根底がくつがえされる思いを味わう。

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この医療技術によって生まれた子供の、自分の父は誰・母は誰であるのかを知る権利(出自を知る権利)は、日本の法律ではまだ明確にされていません。

そのために現在も解決されていない、配偶子提供の問題を、ご自身の経験をとおしてたくさん挙げられました。

◆精子提供により生まれたことを知らされないことによる、本当のことを知らされなかったことに対する怒りや虚しさ。

◆家族間に溝ができるおそれ。

◆自分が何者なのかという不安をかかえる。

◆医療受診の際の不安。

◆知らずに近親婚になってしまう不安。

◆また、出自を知る権利が法律で認められたとしても、親が配偶子提供で出産したことを子供に告知しなければ、子供はその権利を行使することができない。

など。

先生は、こんな壮絶な体験をとおして現在は、非配偶者間の人工授精で生まれた人の自助グループDOGを立ち上げて、社会活動をしておられます。

この技術で生まれてくる子供たちが、今後同じように悩まなくてもいいように

親から子への告知の支援が必要、

生まれた子には、提供者の情報を知る権利を認め

提供者がちゅうちょしなくていいように、安心して情報を開示できる仕組みづくり

と、子ども・親・提供者の三方全ての当事者にとって良いあり方、誰がトクで誰が損ということがないようにする方法を考えることが必要。

そして何よりも、配偶子提供をタブー視しない社会になっていかないと、いつまでたっても「他人には言ってはいけないこと」になるかもしれない。 

親がネガティブな感情を持たずに、子どもに事実を伝えることができるためには、何よりも、社会・人々の意識が変わっていくことが最も大切。

生殖医療に関わる当人や関係者だけでなく、全ての人がこのことについて知ること、精子提供・卵子提供について正しく知ること、そして意識を変えていくことが大切だと思う。

とおっしゃっていました。

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それにしても、もし大人になってから、ある日突然親からそんなことを告げられたら・・・。

きっとものすごくショックを受け、悩んで、苦しんで、孤独を感じて、寂しく、張り裂けそうな、自分という根底が崩れてしまいそうになるかもしれません。

それとも、一度はびっくりしても、静かに受け止めることができる方もおられるかもしれませんね。

この先生は、よくぞそのエネルギーを社会活動のほうに向けていかれたと思います。

それまでの葛藤から、同じ問題で苦しむ人が減るようにと活動されていることに、敬意を表したいです。

私たち一人一人が、この問題について、まずは知ることからだと思いました。

皆さまはどう思われますか?

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